2015/11/11
「感情をあらわにする人を見ると不思議な感じがする」とは、ある大手金融企業にお勤めされているタイプ5の課長の言葉です。
タイプ5は、自分のアタマで理解できることで、自分の世界を管理し、コントロール出来ているという満足と自信を得ます。そこでその自信から、すべて自分の内部で処理しようとし、言葉足らずになり、他者とのコミュニケーションに問題が生じます。他者が何を感じているかに無頓着になり、部下の心の変化には気づかず、部下が去っていくということも有ります。(①のセッション部分)
タイプ5の部下指導の方法は事実先行型で、「あなたは○○君に比べて△△ができていない」という伝え方をします。事実としては正しくとも、能力の比較がむき出しなので、Aさんは、自分の努力や人格、全てに×がつけられているように感じます。(②のセッション部分)リーダーとしては、そのできていない事実から、分析を行い、方法を理論化し、さらに・・・と、指導したいところなのでしょう。しかし、その想いは伝わっていません。反発されて逆効果であるばかりでなく、相手の心に深い傷を残すことにもなることでしょう。はじめに「あなたは一生懸命やっていると思うのだけれど、このような事実があり、これを一緒に改善して行きたいのだが」と、承認、共感しながら同じ目線で話せれば、Aさんも頑張ろうと思えるのです。しかしタイプ5にとって、承認、共感のコミュニケーションを実行することは困難でしょう。このダイアログでのリーダーは、スタッフであるAさんの訴えの原因が、自分のコミュニケーション能力の不足に焦点が当たることを避けたいようです。(③のセッション部分)
EC=エニアグラムコーチング例「人には感情があることに気づかせる」
課長(上司) 「お疲れ様」
リーダー(部下)「お疲れ様です」
課長 「最近プロジェクトの様子はどう?」
リーダー「ええ、データが少し不足で、結構分析に手間取っています」
課長 「そうか、君の分析は緻密だからね。ところで、君の部下のAさんから、ちょっと相談があったんだがね」
リーダー「はい」
課長 「どうもAさんは、最近仕事に自信を失くしているらしい」
リーダー「はあ」
課長 「何かあったのかね」
リーダー「いえ、全く分りません」
課長 「Aさんについては、何も分らないのかい?」
リーダー「はい。何も分りません」
課長 「Aさんが、今どんな気持ちだとか・・・」
リーダー「いえ、全く」
課長 「Aさんは、仕事を辞めたい、と言ってきたんだよ」(①他者が何を感じているかに無頓着になり、部下の心の変化には気づかず、部下が去っていく)
リーダー「えっ・・・」
課長 「Aさんが言うには『あなたはB君に比べて理論化ができていない』と言われ続け、
仕事も嫌になった、と訴えてきたのだが」
リーダー「それは事実ですから・・・」
課長 「事実ではあるのだろうけど、君と感情的に距離感を感じているようだね」
リーダー「そうですか」
課長 「Aさんは、『否定ばかりされている』と言っていた」(②能力の比較がむき出しなので、全てに×がつけられているように感じさせてしまう)
リーダー「・・・」
課長 「もし、このように伝えられたとき、感情面で君はどのように感じるだろう」
リーダー「・・・」
課長 「Aさんが気持ちよく、仕事に取組める方法を、今後、考えていかなくてはならないだろうね」
リーダー「でもAさんの理論が、研究に貢献しているかどうかが、問題なのではないですか?」(③リーダーは自分のコミュニケーション能力の不足に焦点が当たることを避けたい)
解説
タイプ5へのコミュニケーション能力向上の指導は、あえて「人間の心の原理とは」「感情をどう扱うか」などを、コミュニケーションのセミナーや本で、理論的な知識学習をさせる一方、コミュニケーションのロールプレイングで練習をさせると効果が有ります。他者の中に起こっている感情を感じ取る、想像する訓練をさせるのです。例えば「あなたの話を聞いて、彼には今、どんな気持ちが湧いてきたと考えますか?」などの感情交流の訓練です。課長がメンター役となり、EC=エニアグラムコーチングの中でトレーニングを続けると良いでしょう。