2015/11/12
下記のダイアログでは、研究職であるリーダーは課長に、スタッフの分析力が低いという理由で、部下への不満を訴えています。研究職であればなおさらに高い分析力・構造力を誇るタイプ5は、部下の能力に不足を感じて成果に対する危機感を募らせていたのでしょう。
タイプ5は成果へのプレッシャーが高まると、自己の知識、理論、方法、能力にさらに依存してしまい、他者に対して狭い見方を強める傾向があります。
さらにタイプ5は、他者からの承認が得られないと、他者に拒絶され、世界とつながっていないのではないか、という強い孤立感を感じてしまいがちです。しかしタイプ5リーダーが、今、ここで、十分に役立つ存在であり、「仕事を通じて感謝された」「仕事がしやすくなったと評価された」などの承認を得ることで、タイプ5は安心を得、狭い視野から離れることが出来ます。(①のセッション部分)このダイアログでは、安心を得させた後、部下育成のミッション、に視点を変えさせています。(②のセッション部分)具体的にはスタッフがタイプ4であることから、タイプ4の弱さである、目的を見失う行動に焦点をあて、コーチングによって気づかせることを促しています。(③のセッション部分)
課長は、リーダーの役割がチームの成果ばかりにではなく部下育成、特にスタッフの将来の可能性を育む大きなミッションがあることを思い出させ、正しい指導方法に気づかせる必要がありました。
EC=エニアグラムコーチング例「部下育成のミッションに気づかせる」
リーダー(部下)「お疲れ様です」
課長(上司) 「お疲れ様、今日は何かな?」
リーダー「スタッフのBさんの件なのですが」
課長 「Bさんか・・・うん、それで・・・?」
リーダー「彼のやり方には、分析がなってないのですよ。それで今回のプロジェクトが、遅れているのですが、やっている筋道がめちゃくちゃです」
課長 「・・・遅れているのだね・・・で?」
リーダー「彼のやり方じゃ、ダメでしょう」
課長 「Bさんから聞いた話では、今回のプロジェクトにおいて、リーダーが客観的な調
査をしてくれたおかげで、事実が確認できたと感謝していたよ」
リーダー「え、彼がそんなことを言ったのですか」
課長 「リーダーのヘルプのおかげで仕事がしやすくなったと・・・」
リーダー「え、そうなのですか」
課長 「あなたの洞察力は、皆、認めているのじゃないかな」
リーダー「はあ」
課長 「Bさんはこれからの人だからね。まだ分析力は低いのだろうが、あなたとのこの一件で、リーダーとはコミュニケーションがうまく行かない、という印象を持つとまずいね」
リーダー「はい」
課長 「少し、遅れ気味ではあるが、方向が間違いではなかったことが、理解できたことで、チームスタッフはリーダーへの信頼を高めているね」(承認を得ることで、タイプ5は安心を得、狭い視野から離れることが出来る)
リーダー「そういっていただくと嬉しいです」
課長 「問題は、今後Bさんをどのように、指導育成していくか、だね」(②安心を得させた後、部下育成に視点を変えさせる)
リーダー「はい」
課長 「君に何か、考えがあるのかい?」
リーダー「・・・」
課長 「彼はタイプ4だね。Bさんの分析にはどこか、目的がトンでしまうところは無いかい」
リーダー「あります」
課長 「そのことについて話したことは?」
リーダー「いえ、まだです」
課長 「そのことを、始めてみてはどうだい?目的に焦点をあてて・・・何が出来るかな・・・」(③目的を見失う行動に焦点をあて、気づかせることを促す)
リーダー「・・・あ、目的に焦点をあてて、コーチングしてみるのは、いいかもしれません。何のための実験・分析かということが把握できていれば、Bさんのブレは少なくなります」
課長 「なるほど、Bさんの真の課題は、目的を見失って、ブレてしまうことだったのだね」
解説
タイプ5へのNGワードは「愚か者。無能だ。役立たず」です。知を頼りとして、自己の無力感を否定しようとしているタイプ5は、強いショックを受けます。そしてこの言葉を放った人を、苦々しい思い出として、一生忘れることは無いでしょう。気をつけましょう。